1955年(製作=新東宝)の作品です。総指揮は星野和平、製作は津田勝二、監督は伊藤大輔、脚色は伊藤大輔・菊島隆三、原作は北条秀司です。
訳があって、リメイクされた王将を見続けています。まだ未見であった新東宝版をみることができました。約2時間。北条の原作の三部をすべて映画化したもので、他の二作品とは異なります。とはいえ、伊藤大輔が監督であることは変わりません。主演は本来、阪妻、そして、小春役は山田五十鈴。松竹にて製作されるはずでしたが、阪妻が急死。そのため新国劇で主演をはった辰巳柳太郎が坂田三吉役を演じます。娘の玉江は小暮実千代、君子は香川京子、そして、小春は田中絹代と、たいへん、豪華な面々が揃います。
作品としてはそこまで評価が高いものではないようなのですが、悪くない作品でした。特に、関西名人を名乗って以降、坂田の将棋道場も盛んで、坂田会にも強い弟子たちが揃ってきました。ところが、東京との対局ができなくなってから12年。東京の将棋連盟が発展的に解消するということで、東京との対局を望む若手たちは雪崩のように坂田会から脱退。沼田曜一が演じる森川八段を残して、皆が立ち去っていくのです。そして、茫然とする三吉。傍には玉江はいません。一番弟子の毛利と駆け落ちして勘当されている状態。女学校に通う君子が面倒をみていたのです。
☆
そこに、無資格でならばと、関根金次郎名人の役回りである入江名人との対局が行われるという段取りを、天王寺時代から後援者となってきた宮田(田中春男)が、新聞社に頭を下げて設定することに成功するのです。これこそ起死回生の機会とばかりに、生きる屍となりつつあった三吉は奮起します。ところが、結果は惨敗。毛利が事業に失敗し、満州に逃亡せざるを得ない玉江は、一目会おうと対局の場にやってきますが、無残にも敗北した父親をみて、逃げるように立ち去っていきます。介抱する森川と君子。そこに、有望な弟子であった松島(中山昭二)が、おそるおそる家を訪ねてくるのです。自分は坂田を裏切った身。しかし、森川にはその心を理解されていたこともあり、詫びを入るれことも兼ねて、やってきたのです。
そして、自らが学んだ近代将棋を稽古台にし、それを超える将棋をして欲しいと懇願。入江名人との対局の際、地面に森川と松島が書き、これ以上、坂田に手ははないとした棋譜。それを帰り道、偶然にも三吉の目に入り、一度は君子にもう将棋はしないと約束した矢先、将棋台に向かって、一つの手を考え出すのです。それをそっと見ていた森川は感動のあまり飛び出してきたのです。そして、大阪に帰ろうと、前向きな展開で話は終わりかけます。小春の分も含めて人力車を予備、妙見さんにお参りしてから帰るという三吉らと一時分かれて、車に乗った森川と松島。山科に向かう途中、大型トラックと衝突して、横転……そこで映画は強引に終わります。前後二作とは異なる展開が含まれており、なかなかおもしろかったのですが、最後はあまりにも唐突で、必然性がなく、もったいない感じでした。
(Y)
訳があって、リメイクされた王将を見続けています。まだ未見であった新東宝版をみることができました。約2時間。北条の原作の三部をすべて映画化したもので、他の二作品とは異なります。とはいえ、伊藤大輔が監督であることは変わりません。主演は本来、阪妻、そして、小春役は山田五十鈴。松竹にて製作されるはずでしたが、阪妻が急死。そのため新国劇で主演をはった辰巳柳太郎が坂田三吉役を演じます。娘の玉江は小暮実千代、君子は香川京子、そして、小春は田中絹代と、たいへん、豪華な面々が揃います。
作品としてはそこまで評価が高いものではないようなのですが、悪くない作品でした。特に、関西名人を名乗って以降、坂田の将棋道場も盛んで、坂田会にも強い弟子たちが揃ってきました。ところが、東京との対局ができなくなってから12年。東京の将棋連盟が発展的に解消するということで、東京との対局を望む若手たちは雪崩のように坂田会から脱退。沼田曜一が演じる森川八段を残して、皆が立ち去っていくのです。そして、茫然とする三吉。傍には玉江はいません。一番弟子の毛利と駆け落ちして勘当されている状態。女学校に通う君子が面倒をみていたのです。
☆
そこに、無資格でならばと、関根金次郎名人の役回りである入江名人との対局が行われるという段取りを、天王寺時代から後援者となってきた宮田(田中春男)が、新聞社に頭を下げて設定することに成功するのです。これこそ起死回生の機会とばかりに、生きる屍となりつつあった三吉は奮起します。ところが、結果は惨敗。毛利が事業に失敗し、満州に逃亡せざるを得ない玉江は、一目会おうと対局の場にやってきますが、無残にも敗北した父親をみて、逃げるように立ち去っていきます。介抱する森川と君子。そこに、有望な弟子であった松島(中山昭二)が、おそるおそる家を訪ねてくるのです。自分は坂田を裏切った身。しかし、森川にはその心を理解されていたこともあり、詫びを入るれことも兼ねて、やってきたのです。
そして、自らが学んだ近代将棋を稽古台にし、それを超える将棋をして欲しいと懇願。入江名人との対局の際、地面に森川と松島が書き、これ以上、坂田に手ははないとした棋譜。それを帰り道、偶然にも三吉の目に入り、一度は君子にもう将棋はしないと約束した矢先、将棋台に向かって、一つの手を考え出すのです。それをそっと見ていた森川は感動のあまり飛び出してきたのです。そして、大阪に帰ろうと、前向きな展開で話は終わりかけます。小春の分も含めて人力車を予備、妙見さんにお参りしてから帰るという三吉らと一時分かれて、車に乗った森川と松島。山科に向かう途中、大型トラックと衝突して、横転……そこで映画は強引に終わります。前後二作とは異なる展開が含まれており、なかなかおもしろかったのですが、最後はあまりにも唐突で、必然性がなく、もったいない感じでした。
(Y)