身に染みます。

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'70年代は「新しい」という言葉に魅力があった。人がまだ手をつけてないことを見つけ、そこに楽しみを探してみようという気分。なになにみたいですね、と言われることが最大の侮辱だった時代に、同じ意欲を持った仲間と知恵を出し合い、互いの顔を見ながら盛り上がる高揚感。そんな仕事が楽しかった。しかし、'80年代以降、いつしか効率という言葉が幅を利かせるようになり、CDが200万枚売れた、300万枚売れたという割にはお祭りにならない。人の脳のなかの何かを刺激できなくなってしまった。社会のシステムが人間の知恵や能力、さらには気持ちのいい欲求に勝ってしまったのかもしれない。だからこそ、私たちは今、心のなかのちょっとした余裕、遊び心や愛情といった、人間が本来持っているはずのエネルギーを再び高めていかなくてはいけない。私はそう考える。                         

阿久悠
(Extime2007, October, vol.1, p.3)

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「なになにみたいですね、と言われることが最大の侮辱だった時代」というのがなんとも共感できます。「人間が本来持っているはずのエネルギーを再び高めていかなくてはいけない」とは、まったくその通りです。

(Y)