1976年7月(製作=日活)の作品です。製作は伊地智啓、企画は成田尚哉、監督は小沼勝、脚本は佐治乾です。

「犯される」というタイトルではもったいないほど、濃い内容になっています。宮下順子は宝石店で責任者を務める夫・花上晃を持つ主婦。実に平穏で幸せを満喫しているといった感じで話は始まっていきますが、ある日、自分をじろじろと眺め、また、後を付けてくる不審な男に気付きます。そして、友だちだといって夜中に家に夫が連れてきたのが、その怪しげな男だったのです。宮下は唖然とします。一体誰なのかと問うても言葉を濁す夫。どうやら、宝石を密輸入する際の、仕事仲間といったところで、花上をかばって逮捕を免れさせたという経緯があったようで、今の地位も幸せも自分のおかげだろうと横柄な態度に出てきたのです。堀田真三。3年ぶりの再会。

強引に花上に飲めない酒を飲ませ、気絶させてしまい、その隙に、宮下に手をつける堀田。暴力を働きます。その男がまたやってくる。宮下は絶対拒絶の意志を伝えますが、自分たちの幸せには仕方がない、これが最後だと説き伏せる花上。そうこうしているうちに、客室乗務員をしている水乃麻希と空港で落ち合った堀田は、花上の家にやってきてずかずかと入り込み、三人で奥の部屋に閉じ込もってしまいます。何をするのかと思いきや、股間に隠しいれたダイヤを取り出し、鑑定するという打合せ。その勢いで、水乃の肉体までも欲しがろうとする堀田と揉み合いに。そこに宮下も入って、二人で堀田の首を絞め、殺してしまうのです。その死体は花上が、車は水乃が始末。



しかしこれだけではすみません。さらにそのバックにいる長弘とその部下が、まずは水乃を捕獲。拷問のあげく、事故死に見せかけて殺します。次にターゲットになるのは当然、花上。その手は宮下にまで及んできます。花上は死体を家の床下に埋め、そこを引っ越し、さらに会社をやめて関西に高跳びしようとします。再起を図ろうとするのです。それを知った宮下は自分もついていくと懇願しますが、危険だからととどめ置きます。とはいえ、やはりいてもたってもいられない。堀田の屍と怪しい人影が絶えず自分を監視しているような気がして、とにかく花上の後を追います。ところが、その途中で、長に捕まってしまい、二人とも真相を喋るまで互いの目の前で辱め、拷問されるのです。

そして、夫婦の間には、この極限状況のなかで徐々に亀裂が入っていきます。家の床下を掘った後、どっちが本当のことを言っているのかが問われ、嫁が穴に落ち込んで気絶してしまったことをいいことに、それを強要されたといえ、死んでしまえと埋めようとする花上の姿に、宮下が唖然とする姿はかなり迫力があります。土をかぶせられるのが可哀そうでもありますが。結局、穴からダイヤは見つからず、実際は、貸し金庫に閉まっていることが分かり、長と宮下が確認に行きます。その隙を縫って銀行職員にSOSの手紙を渡し、それをネタに、自分たちを殺すことはしないよういという瀬戸際の交渉をする宮下。夫にすがる妻の姿は一切見えない。その視線の強さは独特なものがあります。そして、長らがダイヤを取り戻し立ち去った後、車中で緊縛されていた夫に助けを求められる宮下ですが、無視。サイドブレーキを戻して、そのまま崖下に落下させてしまうのです。轟々と燃える車。憐れ。

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(Y)