街歩き+喫茶(時々映画)

差別論研究会から、新たに街歩きBlogへ

芸者――苦闘の半生涯

読んでいないと思ったら、既読でしたが、結局、もう一度読んでしまいました。増田小夜という1925年に塩尻で生まれ、諏訪で芸者をしいた女性が売春防止法が成立した直後に『主婦之友』に発表したものを平凡社が1957年に発刊したものになります。

昭和10年代に置屋に売られ、やくざの親分に身請けされるまで必死に芸者稼業を務めてきた増田は、戦後、闇市のなかでカツギ屋・露天商・淫売などを経験し、愛する弟を自殺で失い、自らも、自殺を試みながら失敗し、紆余曲折を経て、力強く生きるその生を迫力のある筆致で描いています。

特に、千葉で朝鮮人の知人たちともにカツギ屋をしていたときの描写が非常に生々しく興味深いものがあります。また、「蓮池」という千葉駅近くの花柳界の記述も興味深く読みました。



筆者が伝えたかったことは、「みだりに子を生むな」ということでしたが、売春防止法に対する批判の一文を備忘録として記しておきたいと思います。

「法律でばかりこんなことをきめても、売春はそう簡単になくなるものではありません。彼女たちを、酷使して、暴利を貪る業者の手から救ってくれようとの思いやりからでありましょうが、法律をきめる人たちの中に、私たちのように、そうしなければ生きて来れなかった人がいるだろうか。」(p.216)

「好きで売春なんかする者はありません。腹が減れば、人間盗みをしてでも腹を充たそうとするのが本能ではないでしょうか。売春のことだけを法律で禁止してもなんにもなりません。」(p.217)

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(Y)

千本三条(3)――『千本組始末記』

柏木隆法『千本組始末記』海燕書房、1992年をようやく読了しました。実に興味深い著作でした。おそらく千本組についてまとまって書かれた唯一の書だと思います。その意味でも貴重です。花園大学で70年安保を経験した著者の体験がこの著作の動機の核にもなっているようです。

アナーキストとやくざ(千本組)が共同行動を取った「大堰川事件」(1925年)で唄われた替え歌がその表紙に書かれています。

死ぬならば
革命戦か
さもなくば
朧月夜に
女と二人
ギロチンにのぼりて
見れば悠然と
桜の花は足もとに
散る

このときの現場指揮者が笹井末三郎。出世稲荷に隠していた拳銃もこのとき持ち出していたようです。



社会運動(主に大正アナーキズム)と侠気というものが明治・大正・昭和という時代のなかでどのように入り混じりどのように発現されていたのか。それを千本組を通して見るというのがこの著作の主題旋律のように思います。

特に笹井末三郎の人脈に、大杉栄、岡本潤、辻潤、久板卯太郎、和田信義、宮嶋資夫、新谷与一郎、近藤茂雄、松本常保、船越基、小野十三郎などが出てくる点は大変に興味深い。

兄・笹井静一(千本組二代目)が大日本国粋会京都支部の代表を務め、その看板が千本三条の本家に掲げられていたこともなんとも驚きです。戦後直後に田岡一雄に兄弟分の盃を申し込まれて断ったというのが真実ならなおさら興味深い。



そして、千本組がいかに戦前・戦後の映画史に強い影響を与えていたのかも、既存の映画史にはなかなか出てこない点で興味深く、マキノ省三・雅弘・光雄、永田雅一、池永浩久、渡辺邦男、小林一三、月形龍之介、長谷川一夫、片岡千恵蔵などなど、何かと深い関係にあったことがリアルに書かれています。

とにかく、どこままでも枝葉がのびそうな本で、考えるべきヒントや論点が盛りだくさんでした。楽しみながら読書が出来た感があります。

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(Y)

女優・藤純子

『別冊キネマ旬報』(1972年4月5日発行)の「女優・藤純子(保存版)」を遂に購入しました。これは(結婚による)引退記念にあわせて作られたものです。『関東緋桜一家』のポスター(保存状態良好)も入っています。原価の7倍の値段でしたが、いい買い物をしました。

藤純子出演の全作品や、マキノ雅弘・俊藤浩滋へのインタビュー、佐藤忠男の藤純子論などが所収されています。実にいい。



1971年度キネマ旬報ベスト・テンで「華麗なる女優賞」を受賞してのインタビューが掲載されているのですが、驚いたのは一番好きな役がなんと私の一番好きな藤純子出演作品と同一だったことです。それは加藤泰監督「日本侠客伝・昇り龍」。さらに、鈴木則文が監督した「緋牡丹博徒・一宿一飯」で私が好きな緋牡丹の刺青を見せながら自分が汚れた人間であることを示して見せるシーンが、藤純子自身もお気に入りのシーンであったことも感動です。

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(Y)

YAKUZA MOVIE BOOK

Mark Schilling,The Yakuza Movie Book: A Guide to Japanese Gangster Films, 2003, Stone Bridge Press. という本が出ています。Mark Schillingという人はどうやら映画を含めた日本文化研究をしている人のようです。また、読み次第、簡単な評を掲載したいと思っています。

ちなみに、the University of California, Berkeleyに"the Center for Japanese Studies (CJS)"というのがあります。

物好きといえば物好きなことですが、ひとのことはとやかくいえませんね。

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(Y)

『映画で学ぶ被差別の歴史』

大阪教育大学の中尾健次さんによる『映画で学ぶ被差別の歴史』(解放出版社、2006年)という本が1年近く前に出版されています。

■解放出版社
http://www.kaihou-s.com/book_data06/4-7592-4044-6.htm

扱われている映画は時代順に配置されています。

・中世――「もののけ姫」
・近世――「侠客春雨傘」「鞍馬天狗・角兵衛獅子」「赤ひげ」
・近代――「破戒」「無法松の一生」「王将」「橋のない川」(東陽一監督作品)「橋のない川」(今井正監督作品第一部・第二部)
・現代――「にあんちゃん」「人間みな兄弟」「男はつらいよ」 (コラム「部落」「荊の道」)

非常に勉強になったというのが第一の感想です。原作のあるものに関してはそれとの比較を詳細に行い、また、芸能や職業を描いている作品の微細な部分に入り込み、注目すべきシーンなど著者の思い入れも交えながら解説してくれるのは非常に親切で助かりました。

ところで、戦後日本映画が差別を描くことそれ自体がどのような意味を持っているのか。部落差別のなかに入り混じる女性差別(「赤ひげ」)や朝鮮人差別(「にあんちゃん」)に対する照射が弱く、「王将」で三吉を演じた三國連太郎を、映画における俳優の位置という視点から論じてみることもないので、少々物足りなさが残る著作となりました。

「教材」という視点と少々型にはまった反差別の姿勢を評価しすぎる嫌いを感じたところです。また、私自身の関心にひきつけていえばヤクザ映画がほとんど言及されていないのは至極残念です。ただ、「侠客春雨傘」は大変興味深く、記述には一定の不満が残りますが、未見の映画ですので、早急に確認したいところです。

また、映倫の問題にも触れられず、部落解放運動が上映阻止運動をしてきたことの意味も問われずじまい。これでは、入門書の類とはいえ、「留保」が多すぎるような気も…・・・。



以下は、他の出版社などの関連サイトです。

紀伊国屋書店

[Amazon]

やはり、「差別の映画社会学」というべき作業が求められているのかもしれません。

(Y)

近代日本と小笠原諸島

千葉大学教員の石原俊さんの新著『近代日本と小笠原諸島――移動民の島々と帝国』が平凡社より出版されました。2007年9月です。500ページ以上にわたる大著で、まったくの力作です。

歴史社会学的な研究を差別論において指向している私にとっては非常に参考/参照にすべき著作だと思います。精進したいところです。また、読後感など記すことが出来ればと思っています。

■平凡社
http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/exec/frame.cgi?page=newbooks.html

■紀伊国屋
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4582428029.html

(Y)
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